葬儀を終えた日(日記より)

八月五日(水)

 とうとう小さな箱に入ってしまいましたね。きょう荼毘に付されたあなたを大事に抱えて車に乗り、膝に置いていると温かかったですよ。あんなに冷たくなっていたあなたが、今度は温かかったのです。
 聞こえていましたか。あなたは臆病だから、火の中へ入ってゆくのは怖いと震えているかもしれないから、「大丈夫、怖くないよ。もう熱くないからね」とあなたに云い聞かせていたのですが聞こえていましたか。
 一旦、家に帰ってからは疲れてしまって、目もあけていられないほど痛くて、喋る元気もなくて二階で横になりました。ほんの少しまどろんで目覚め、一瞬、私の居るところが「此の世」か「あの世」か分からず、やっぱり此の世だと知ってガッカリしました。これは全部が夢、それとも私もすでに「あの世」に居るんだと思いたくて仕方ありませんでした。私も行きたい。あなたの居るところへ行きたいです。
 お骨上げの時、私は一人で早くからあなたが出てくる鉄の扉の前に立ち、待っていました。扉が開いて台車の上のあなたが見えると、早く早く、ここまで来てと心がはやりました。あなたの骨は真っ白で美しく、どれも太くてとっても強そう。足の指も、膝のお皿も、大腿骨も、脊椎も。鎖骨も肩も腕も指も、のど仏もどれもどれも立派できれいでした。
 頭蓋骨もそのままで、あなたの扁平な頭頂部のとおりに丸い可愛い頭でした。大きな箱にでも入れて、そのまま家へ連れて帰ってあげたかったのに、係の人が容赦なく折り、叩き割るのが嫌でした。できれば全部、あなたを丸ごと全部、指の骨のひとつまで連れて帰りたいというのに、なぜ骨壷に入るだけしか持ち帰れないのでしょう。
 夜になってみんなが引き上げ、K(長女)と二人になってから、またあなたのことを話して涙ぐんでいました。Kと私は、できるだけ多くの骨を持ち帰ろうと、必死になって入れていたねと少しだけ笑いました。Kが疲れて眠ってしまうと、急にひどく泣けてきて、泣いて泣いて大泣きをしました。認めたくない。認めたくない。もうあなたが二階の部屋に居ないこと。生きて戻ってこないことなんか。
 あなたの骨とは、ずっとずっと一緒にいます。ずっと一緒、毎日そばで寝るからね。


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