あなたの声とダッコ

 先日、久しぶりにあなたの声を聞きました。
 また私の知らないうちに新しいデジタルカメラを買っていたようでしたが、小言をいわずに黙っていました。そのデジカメで、昨年七月にダッコを写真に撮りました。それは動画が撮れて声まで録音されるというので、あなたは試してみたくて仕方がなかったのでしょう。老猫のダッコは先があまり長くないだろうから、動く姿と声を遺しておくのだとあなたはダッコを撮りました。そんなことを言っておいて、一ヶ月後の八月に、ダッコではなくあなたの方がさっさと逝ってしまったではありませんか。
 その動画と声の録音は、あなたのVaioに移してあったようですね。Hからそれを聞き、卒論が終わったからとノートパソコンを持って帰ってきました。それでやっと聞くことができました。Hの部屋の椅子や床の上にいて動くダッコを写すのに、あなたは何度も「ダッちゃん、ダッちゃん」と呼び、レンズの方に顔を向けさせようと「チュッチュ、チュッチュ」と舌を鳴らしているのです。姿はダッコだけですが、ダッコの老いた鳴き声と、あなたがダッコを呼ぶ声や注意を引こうとして出す音が、鮮明に残されているのです。
 あなたは声をよく人に誉められていましたね。私の友人・知人は電話でのあなたの声をベタほめでした。神田正輝みたいと言った人までいます。関西弁ではないうえに、あなたときたら電話モードへの切り換えが完ペキでしたから、声だけで「ステキな旦那さま」だと思われたりしました。背が高くてスポーツマンタイプと想像されるのですが、背も特に高くなく、色白でポッチャリ型だと何度も訂正しなければなりませんでした。
 それはともかく、Kが先日その声を初めて聞き、かなりキてしまったようでした。私も初めて聞いた時はチョットくるものがありました。今はもう大丈夫です。たったそれだけのあなたの声ですが、遺されていてよかったなと思います。私があなたの姿も写しておけばよかったです。そういったことも、以前のように仲よく楽しい日々であったらできただろうにと残念でなりません。
 ダッちゃんは、私と同じで体調のよい日と咳をして寝てばかりいる日があります。困っていることは、ドライのキャットフードが食べづらくなってしまったことです。小さいものを探したのですが売っていません。それで好きな味のを細かく割って与えています。それでも食べたあとはすぐに水とともに勢いよく吐いてしまうことが多いです。「白身まぐろのえびだし味」の缶詰はトロトロに練って与えますが、食べてくれる日とそうでない日があります。ダッちゃんの介護や世話は、心残りのないようにしてやりますから安心して下さい。
 猫だけでなく動物は皆そうですが、人間とちがって悩んだり、もう生きているのが嫌だからと凹んだりせずヤケを起さず、毎日を生きています。気位が高くて凛として、私はダッコをとても尊敬しています。こんなふうに老いていきたいなと思っています。それでは、また書きます。

2005年5月10日
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