誉めてください

 お元気ですか。久しぶりに書きます。
 今日はHの卒業式でした。あの子も無事に大学を出たのですよ。喜んでください。なんて言わなくても、もう喜んでいるあなたが見えるようです。しかし、あなたという人は、ほんとうに喜びの感情を外へ出さない人でした。私や娘たちが誕生日や父の日にプレゼントを渡しても、笑顔も見せずに小声で「ありがとう」と言い、さっさとその場からいなくなってしまうのでした。でも今日は笑顔でHに「おめでとう」を言ってやってくださいね。きのうHは電話をよこし、寒いし朝も早いから卒業式には来なくていいよと言いました。午前十時に豊中まで行くのは私にとって大変なことです。ですからあなたと二人で家で祝っていましたよ。

 私は元気になってきました。
 小説の連載が無事に終了して気が抜けてしまい、しばらく沈んでしまいましたが、これではいけないと思って外へ出るように努めました。いま私は何をするべきかを考え、とりあえず目のまえにあることからやっていこうと思いました。まず、小説と詩をかたちに残しておこうと出版のことで動き始めました。あなたは詩集を本にすることを熱心に勧めてくれましたが、出版社の人はまず小説をぜひと言うのです。担当のYさんときたら大袈裟なくらい誉めてくださいました。もちろん営業モードもあるのでしょうけれど、やっぱりうれしかったです。

 次に欅のことです。裏の斜面の土留め工事をし、ブロック塀の基礎を造ってもらいました。けれども、あの欅が今後も成長を続ければ、根っこがブロック塀を壊してしまう恐れがあるというので、しぶしぶ伐ってもらうことにしたのです。伐られた二本の欅のうち、太い方の幹は処分せずに残しておいてもらいました。細い方は、中が虫にやられていたので処分してもらいました。太い方の幹で何か造って記念にしようと思います。
 ネット検索で富田林に工房を見つけました。さっそく連絡をとると、オーナーのKさんという方が家まで木を見にきてくださいました。あなたを飾る写真立てや一輪挿しを造っていただこうと思います。枝のところでは鍋敷きがいくつもできるということでした。工房では四月に作品の展示販売をおこなうということです。どんなものが他にできるのか参考のため、ぜひ見にいこうと思っています。Kさんは「道行考」を見てくださっているそうです。相互リンクをしましょうかともお話ししています。

 それから「道行考」のファン(!)の人たちともお会いして話しました。楽しかったです。「歩き遍路」の説明会にも行きました。そうですよ。私は「遍路」をするのですよ。あなたは亡くなる十日前、そう、あれは私の誕生日でしたが、一人で高野山へ行きましたね。あれは弘法大師様へのご挨拶に行ったのですか。なぜあなたは高野山へ行ったのでしょう。きっと何かに引きよせられるように行ったのですね。あの時、もうあなたは往きかけていたのですね。何も気づかずにいて本当にごめんなさい。

 同行二人。どうぎょうににん。金剛杖に宿る大師とともに歩きます。いえ、あなたも一緒に、同行三人で歩きましょう。私と一緒に歩いてください。あなたのためにできること、それは遍路であることが分かりました。
 元気になります。鍛えます。私が元気でいることを、いちばん喜んでくれる人はあなたでした。だから私は元気になります。そしてあなたの分も生きようと思います。誉めてください。こんな前向きなことが言えるようになりました。少しだけ、私は成長したのですよ。だから誉めてくださいね。

2005年3月25日

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