減らない「おせち」

 あなたが居ない二度めのお正月です。
 昨年12月の下旬まで小説を夢中で書いていたので、おせちは初めからあきらめていました。けれども小説が書けなくなってしまったので、あまりに怠けていてはいけないと思い、少しだけつくりました。つくれないだろうと思って早めにホテルのおせちを注文していたのですが、やっぱりこれをしないと年末・年始という気がしません。だからつくりました。
 おせちでは、お煮しめが私は一ばん好きですから、それを最初につくります。まず大きな鍋でたくさん昆布とかつおぶしの出汁をつくることから始まります。この出汁は大晦日のそばから、お雑煮、お煮しめなどすべての出汁に使います。余分につくってペットボトルへ入れ、冷蔵庫で保存しておくと、料理の煮なおしや、お雑煮の汁を足すときなどに重宝します。
 今年の里芋はKが育てたものでした。暮れに茎を引き抜くと、大小八個ぐらいの里芋ができていました。6月からずっと庭で大きな葉がそよいでいましたが、おせちの具材となりました。何だか惜しいようでしたが料理しました。とってもおいしくて驚きました。皆がおいしいと云っていました。
 紅白なますも好きなのでつくりました。すぐにできるし、味の濃いおせちの中で、酢の物はサッパリとしますから。ブリの柚あん焼も必ず欲しいものですから焼きました。それからミートローフですが、今年のは和風にしました。人参とネギを刻んでミンチに混ぜ込み、ショウガ汁で香りをつけ、しょうゆ味をつけて焼くと、とってもおいしくて好評でした。いつもの鶏の南蛮漬もつくりました。
 買っておいたものはロースハム、焼豚、スモークサーモンなど。多くつくったと分けていただいたものが栗きんとんに黒豆。進物でいただいたセットに黒豆、田作り、数の子などが入っており、以前のように躍起になってつくらなくても済み、ずいぶん助かりました。
 注文したおせちは「和洋中」というものでした。Kが和風のお重をつくって持ってくるだろうと思ったからです。蓋をあけてみると、なるほど豪華ですが、これは何だろうと思うものがあり、食べてみてもさほどおいしいと思わなかったのでした。あなたがいたら率先して一品ずつ食べてみて、これは何々だと云って感心したり、ケチをつけたりしたことでしょう。一流ホテルのおせちだといっても、たいしておいしいものではないというのが私の率直な感想です。もう注文したいと思いません。
 それよりもKのつくったものがとってもおいしいです。去年はあの子もつくる気がしなかったのですが、今年は頑張っていましたよ。教えたわけでもないのに、私がつくっていたものと同じものを、同じようにつくってお重に詰めてあるのです。あなたも嬉しそうに、よくそう云っていましたね。私が用意した大皿の料理が二つと、海老やブリの焼き物、ホテルの二段重、そしてK持参の三段重で、炬燵板の上はご馳走でいっぱいになりました。私はKのおせちばかり食べていました。いちばん面倒な錦卵もあり、梅型に抜いてありました。白身の裏ごしは、とっても大変だったでしょうに。
 Kたちが帰り、Hが寝たあと、少し悲しくなりました。たくさんの料理が残っていたからです。皆で祝ったあとは、毎年ほとんど残らなかったのに。減らないおせちを前に、あなたが居ないことを痛感しました。それだけでなく、儀式めいたお屠蘇をつぐ役も当主である私がしなければならず、大鍋につくったお雑煮の出汁も少しも減りません。たくさんつくる習慣が私から消えません。お供えしたお皿やお碗が、しばらくすると空になっていたらいいのに。そんなことが起こったら、どんなに嬉しいでしょう。
 みんなが居る時に、「俺も居るぞ」と知らせてくれてありがとう。仏壇の下、あなたが居る所から、ガタガタという音を二度も伝えてくれてありがとう。もう2006年になりました。


2006年1月2日

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