チキンカレーと近況

 若葉が美しくなってきました。裏山の木々はさまざまな緑色になっています。秋の紅葉もいいですが、ここは新緑の季節が最もきれいだと私は思っています。
 2004年8月3日に買った鶏肉で作ったカレーはいかがでしたか。とってもおいしかったですね。苦手な皮の部分も、よく煮込めば口の中で溶けてしまうので気になりませんでした。鶏肉の保存は冷凍室で3週間ほどだとKが言い、あたったらどうするのと言ったのですが、「平気平気」と解凍して使いました。あなたも知っているように、カレーを私は前の日から作るのですが、こんどもそうしました。だからおいしかったでしょ。

 あなたはカレーが大好きだったので、作ると真っ先に置いてあげることにしています。大皿で、かならずお替りもしていたあなたですから、小さな器では足りないかなと考えます。しかし、もう仏さまになっていて少食だからこれでいいのだなと、私の方がタップリ食べています。 一人暮らしになってからも、あなたがいた時と同じ量を作る癖がとれないものですから、一人でセッセと三日ぐらい食べなければ無くなりません。ご心配なく。カレーのほかにも野菜や魚も食べています。栄養が偏らないように気をつけていますので安心してください。
 この鶏肉のほかにも、なかなか口にできないものがいくつかあります。あなたが買ったヴィックスの飴、ベッドにあったエビアンの水、机の上にあったペットボトルの麦茶です。それから夏にあなたに供えた“たらみ”のゼリー、私が飲むために買ったアイスコーヒー。それらも食べず飲まなかったため、なんとなく処分せずに置いてあります。冷蔵庫を開けるたび、それらに悪夢の夏を呼び起こされるのですが、なぜ私は捨てられないのでしょうか。思い出したくもない胸が悪くなるような悲しみを、なぜ私は保存しつづけるのでしょう。

 私は風邪をひいてしまいました。頭痛がひどくて食欲がなくなりました。寝ていてあなたのことを思い出していました。私の具合が悪いとき、「できるだけ早く帰ってくるから」とあなたは言って会社へ出かけました。帰りには高島屋へ寄り、きれいなお弁当やお寿司、カステラやプリンなど私の好きなものをいっぱい買ってきてくれました。ベッドの中で鍵の音がするのを私はいつも待っていました。具合の悪い時だけでなく、私は三十年間、いつもあなたが鍵をあける音を待っていたのです。その音も今は聞けなくなってしまいました。
 しかたなく頭痛をおして私は自分できつねうどんを作って食べました。おいしかったです。レトルトの白粥を温めて食べたりもしました。あとで気付きましたが、あのお粥もあなたが買ってきてくれたものでしたね。あなたはお粥だけは小さな土鍋で炊けるようになってくれました。料理はやっぱりダメでしたから、いろいろなものを買ってきてくれました。茶わんむし、卵どうふ、だし巻、ごま豆腐などです。それからサケを焼き、塩昆布や梅干し、お漬物などを添えてお盆に載せて運んできてくれました。あれって、とってもうれしかったのですよ。私がたくさん食べられたら、「おう、よう食べたな」と私を誉め、嬉しそうに笑っていましたね。

 この二週間ほどのできごとは次のようなことです。

◎遍路は延期しました。春は目や体の具合がすぐ悪くなります。行けなくさせているのはあなたですか。一人で行くなんて心配じゃないかとあなたが邪魔をしているのですか。

◎ 「愛別離苦」を外へ出しました。「愛する人を亡くした人の為の100の言葉」の中原憬さんが掲載してくださったのです。同じ不幸を経験された方からメールをいただいたことから決めました。

◎あなたの古いノートパソコン2台とプリンターを処分しました。VAIOはHが持って行きました。毎日少しずつ整理や片付けをしています。家全体のモノを減らしはじめています。

◎Quleさんが欅の丸太を製材のために搬出してくださいました。F工務店の社長さんも来られ、土留め工事の点検をしてくださいました。土は固まったとのことです。

◎「銀河詩手帖」に復帰しました。東淵さんや近藤さんのお優しい言葉がうれしくて、また温かい人たちにふれたくなりました。愛別離苦の中の詩もいずれ投稿します。

◎Hが院生になって帰ってきました。珍しく帰ってきたので何の用かと思えば将来の相談とのこと。来年イギリスへ留学したいというのです。あの子ときたら・・。やれやれ。

◎尼崎で電車の事故があり、大惨事となりました。多くの命が人為的なミスで失われ、やりきれない気持ちです。家族を突然に亡くした人々の悲痛な姿に胸が痛み、ふさいでしまいました。人の悲しみが以前よりもっと分かり、自分のことのようにつらいです。

 チューリップが賑やかです。芝が青くなってきましたよ。雑草ぬきをがんばります。Kが植えた玉ネギが立派になり、ジャガイモの苗が育ってきました。私はキュウリの苗を植えました。去年あなたが張ったネットをたたまず立てかけてありますが、それを今年も使います。ほんとうにあなたはいないのだなあと、そのネットを見るとまた少し悲しくなりました。

私のすぐそばに居て一緒に庭仕事をしてください。雑草抜きはほんとうに大変ですね。それから、庭の植物を皆さんにお見せすることにしました。私たちの庭にたくさんのお客様ですよ。さあ、頑張らないと。

2005年4月27日
前頁 次頁

INDEX